ギャンブル依存症解析【最初から読む】





 

彼はストック台の他にも、爆裂AT機以外の台で順調に勝ちつづけました。

 

通常時のシビアな小役狙いが有効な「ガメラ」を打ったり、「GOGOジャグラーV」では目押しを全て緻密に行えば勝てる台だと知ってからはコツコツ打ち、以前よりも目押しの精度も達者になった事から「ビタ押しリプレイハズシ」が必須な「花火百景」でも勝つ事が出来ました。

 

また、この頃パチンコ店で働いていた彼は「高設定だから出るとは限らない」事や、「設定2のジャグラーでも軽く3000枚出る事も普通にある」事など、勤務店の客とその台を観察する事で理解しました。

そして店によっては「不透明な出玉調整や裏ロム台の存在」が確実にあることを知りました。

 

 

 

彼は店長に気に入られていたのか、たまにご飯をごちそうになったり、遅番の時は「チャリで帰るのしんどいだろ?」とタイミング合う時は車で自宅に送ってくれたりしてもらいました。

 

 

「店長すいませんね送ってもらって……」

 

「なに気にするな。どう?最近は勝ってるのか?」

 

「ええ、そういえば近所の店の大花火がなんかけっこう出るんですよ!たまに設定入れてるんでしょうね…….!」

 

「ああ、あの店の大花火はノーマルだからな。だからだよ。」

 

「どういう事すか?こないだなんか5000枚でましたよ?設定5ぐらいあるんだろうなって….」

 

「いやいや、今時の大花火なんか全部設定1だろうよ。大花火はもともと設定1でもでちゃうんだよ。ノーマルならな。」

 

「へ?」

 

「ウチの店の周りの店、大花火ぜんぜんでないだろ?みんな裏モノなんだよ。たまにすげえ出てる台がチョコンとあって、あとはやたらREGばっかの台だろ。」

 

「はい!そんなんばっかです…..てことはウチの店の大花火も?」

 

「いや、ウチはノーマルだ。イベントの時以外は常に設定1だけどな。フハハ!」

「あとな、あのチェーン系列店でパチンコは打つなよ?調整してるからな。」

 

 

「まじすか……..!」

 

「見た目でもおかしいと思わない?満席で足下にキッチリ2~3箱づつが等間隔とかさ。

まあ、憶測でなくて事実だからな。同僚以外には言うなよ?」

 

「は、はい。てことはウチの店も……..?」

 

「やってないやってない!メンドくせえもん。ただ、イベントの時とか釘開けてるのに出てない時なんかは欲しくなるよな……..司令室のスイッチ1つでハイ!確変!みたいの。」

 

 

「ふつうにあるんですか……裏とか調整とか。店長、疑う訳じゃないんですけど昨日のイベントで僕が設定札刺したんですよ」

「設定6って札刺したアラジンAと設定5の獣王がぜんぜん出ないって客にキレられたんすけど、まさかガセ…..ってことは…..?」

 

 

「あれな!出なかったな~!まあ2台とも3000ゲームも回ってなかったしな。つか夕方まで空き台だったのがもったいねえよな!設定はホントだよ?おまえが疑るのも無理ないからこんど閉店後に設定キー回してみせてやるよ。」

 

 

 

 

このような感じで、きさくに裏事情を知る事が出来た彼は「打ってはいけない店」やらをあらかじめ知る事も出来て負けが込む事はありませんでした。

 

 

 

 

「ところでミリオンゴッドはおまえやるの?」

 

「いえ、まだ打ってませんね。凄そうな台ですよね……」

 

「まあ、打つなとは言わねえけどやる時は3000円だけにしとけよ。」

 

「はあ。」

 

「まだ詳しい事実がどうって完全には把握してないからアレだけどさ、スペックの凶暴さよりも店側の扱い一つで人殺せるよあれは。」

 

「どういう事すか?」

 

「まあ、あれだ…..裏ロムとかの説明はしたよな?あれ系がデフォルトで選べるっていうかなんつうか…..あとモードの仕込みやり放題だし…..ストックも….とにかく、はっきりとは言い切れんのよ。何しろそれ聞いて設置しない事にしたんだから。メーカーの営業がそんな情報最初に持ってくるんだぜ?客殺す気かっての!」

 

「店長、それバイトの僕に言っちゃっていいんすか……?怖くなってきた…..」

 

「大丈夫大丈夫!おまえクチ固いし信用してっから!つかあんな台すぐ無くなるはずだよ。ヤバいもん!…….あ、絶対言うなよ?」

 

「はい。」

 

 

 

そして店長の言う通り、ヤバすぎて自殺者までをけっこう出してしまった「4号機ミリオンゴッド」は、実質上政府までが動き「当局の指導」のもと、「著しく射幸心を煽る」との名目でわずか8ヶ月で強制撤去という末路をたどりました。

 

 

彼はその間、店長の言いつけをちゃんと守り5,6回ほど3000円打っただけでした。

 

一日で100万勝ちが可能で、2,30万負ける事も出来る「4号機ミリオンゴッド」の撤去を皮切りに、当時の狂気じみたスペックの爆裂AT機はこのころからゆっくり姿を消していく事になりました。

 

そしてこの頃、2002~2003年あたりはパチンコの歴史の中で最も多くのギャンブル依存症による自殺者と多重債務者を量産した時期でした。

 

 

その狂気の時期、パチンコ店で働いていた状況と店長の助言が功を成し、事実に基づいたネガティブな情報を予め得ていた為に、彼は奇跡的に致命傷を免れたのです。

 

 

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