パニック障害:ケース1



 
「ここは精神科ですよ?」
 
 
やけに冷たい印象の、どちらかといえば美麗な物腰の看護士。その嘲笑含みの受付っぷりたるや、訪問者の受け取り方によっては「対極」です。
 
 
「ボク、どうしたの?悩みでもあるのかな?しょうがないわね、いきなり思い詰めてこんなトコに来て…..」
 
 
こうとれば良いのでしょう。されど、「あの、ボク、カクカクシカジカで、やばいんです。た、助けてお姉さん…..!」
 
と、保険証のひとつでも震えた手で差し出せば、診察室にエスコートされ、白衣の精神科医がとりあえず話を聞いてくれる事でしょう。彼にとっての未知の恐怖に専門家が対応してくれるのです。まずは一安心。
 
一条の光を実感し、希望に向けての一安心。精神疾患に於いてこれは何より重要なポジティヴ要素といっても過言ではありません。
 
しかし、彼はこう取りました。
 
「完全に門前払いの体じゃねえか….!僕が一人で学ラン来て何がおかしいんだよ?そんなコト思ってる半笑いだろソレ?冷やかしじゃあなくて、ホント頼みの綱的なアレで意を決して来たのに……」
 
 
こうとったのは彼にとってとても良くないでしょう。迷える精神病患者を奈落の底に突き落とします。
 
彼は無言で、恥と期待外れの無念と絶望を、冷笑美麗なお姉さんに見せまいと、即座に振り向いて「精神病棟」を後にしました。
 
自動ドアを開けた瞬間の、病棟の清潔な空気と、外の生々しい湿度の対比は今でも感覚に残っているとの事です。
 
 
 
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