パニック障害:ケース1



 
一回きりの不思議な発作ではなく、二度目の発作が起き、これは複数回起こりうる発作だと自覚しました。
 
この時、彼はもちろん「パニック発作」という言葉も概要も全く知りません。
 
「こないだと同じ感じの、逆らえない恐怖感と憔悴感」という感じの解釈です。
 
「パニック発作」の感覚は、恐らく体験者にしか理解出来ないものです。
 
しかし、「パニック発作」「パニック障害」「不安障害」「不安神経症」という言葉とその症状を少しでも知っていれば、「これはパニック発作かもしれない」と自身で疑う事が出来、しかるべき機関での診療なりをという選択肢が出てきます。
 
パニック障害と不安神経症、概要や症状が多岐にわたる為、まず「パニック発作」の代表的な症状として
 
「漠然として恐怖を伴う不安感」
「心拍数や血圧の急激な変化」
「身体の震えや異常な発汗」
「突発的な喪失感」
 
などを前回の記事で挙げました。
 
そこまでの場面でもないのに過剰にドキドキしたり、言葉が出てこなかったり、異常な緊張状態になったり、頭がおかしくなってしまうのではないかという感覚。
 
自分の認識が大幅にズレていく感覚や、死んでしまうのではないか?という恐怖感です。

 

 

さて、総じてそんな事は1ミリも知らない彼はどうしたのでしょう?
 
「身体の異状ではない」という事をまず確認する必要があります。しかし、彼はなんとなくという確信?で「身体の異状」を疑う事をしませんでした。
 
勘というか、彼自身疑う余地があったのかはわかりませんが、彼が真っ先に焦点をあてたのは「精神」の方でした。
 
「急に震えが止まらなくなったり声が上手く出なかったり、ドキドキしたり。その辺はたぶん結果みたいなもんで、ヤバいのはあの死にそうな感覚だ。」
 
と、いきなり事の核心に辿り着きました。
 
「パニック状態になるから喪失感や焦燥感が生まれるのではなく、まず、感覚の異常が先にくる」
 
という核心です。
 
 

「そしたらあの感覚は何が原因だろう…..どう考えてもアタマだ。精神だ。」
 
この様に彼はまず結論付けます。
 
そして14歳の彼はとてもストレートな行動に出ます。
彼の過ごす環境より少し離れた場所に「精神病棟」があります。
そこは閉鎖病棟が隔離されているほどの規模で、世間が偏見で目を背ける様な、関わってはいけない、当時はそんな不当な印象を浴びる場所でした。
 
よっぽど切羽詰まった心境なのか、よっぽどパニック発作が恐ろしいのか、彼は「おかしいのはきっと精神だ。じゃあ精神病院だ!」と、躊躇せずに病院へ向かいます。
 
現在では、当時とは比べものにならないほど一般的なカテゴリーになっている「心の病」や「精神疾患」ですが、彼の発想の中に「心療内科」や「メンタルヘルス」といったものが全く無いのは、その言葉自体がほぼ浸透していなかった時代だからという事もあります。
 
そういった訳で、なかば上気して彼が向かった先は「精神病等」でした。
 
彼はえもいえぬ表情と心境で精神病棟のロビーに入りました。
 
 
 

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