パニック障害:ケース1



 
結論からですが、彼に何が起きたのかというと、「パニック発作」です。
 
現代の精神医学やらの視点から言葉にすると一言で説明がつきます。
 
しかし、もしそのとき、その場に第三者が居たとして「落ちついて。パニック発作だよ。死なないから大丈夫。」と、言ったとしましょう。
 
そう冷静に諭したところで、彼の耳には絶対に届かないでしょう。
 
彼は好きな漫画を読んでホクホクしてただけのところ、突然、「未知の恐怖感と憔悴感」に覆われたのです。全くもって、訳がわからず、ただ、恐ろしいという感情に囚われます。
 
「なんもしてないし、何も起きてないけど、とにかくヤバい!ヤバい!」
 
そういった心境と、全身の血の気が凍り付く感覚の中、彼は耐えられずに声を出しながら外を走り回りました。
 
彼は、「気が狂う寸前、そのもしくは狂い始めた真っ最中?」だんだん頭で最も的確な言葉を選択できた事を認識しました。
 
その時の景色はやけにハッキリとしていて、自分の感覚が無くなった様に感じる替わりに、空気や地面や夕焼けなど、様々な「自分以外のモノ」と一体になった様な、そんな異次元じみた体験で超こわかったと、そう彼は振り返ります。

 
 
 
「それは、パニック発作ですよ。」
 
 
「いや、わかりますよタケイさん。今ならそれだって解りますよ?でもね、あのときはマジで死にそうだ!って心底おもいましたよ……..」
 
 
「結局、その後はどうなりました?」
 
 
「5分か10分くらいだったかな。時間の感覚はふつうだったから多分そのくらい。なんか少しだけ、なんていうか「ピークが過ぎた感」をちょっと感じたんですよ。」
 
 
「ふんふん。」
 
 
「でね、そのちょっとの安心を境にだんだん治まって?きて、家戻って麦茶のんで、ハアハア言って『生還』しましたね……」
 
 
恐らく、生還という表現は適切なのでしょう。彼の言う、「死にそうな感覚」はパニック発作の数ある症状の中でも色濃い項目です。
 
 
「それでタケイさん、聞いて下さい!その後が大変なんですよ……」
 
 
「また立て続けに発作起きたとかですか?まさか?」
 
 
「いえ、その後しばらくあの感覚はきませんでした。けど、とにかくあの恐ろしすぎる感覚が怖くてしょうがないんですよ……」
 
 
典型的といっては彼に失礼かもしれませんが、かれに付きまとうその感覚は、精神疾患や神経症などに付き物である「予期不安」です。読んで字の如く、「またアレがきたら怖い」という思考、その病的レベルが「予期不安」です。
 
 
さて、多感な14歳の彼が、その「精神体験」を経てどういった心境になったのでしょう。
 
 
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