パニック障害:ケース1





彼につきまとう事になったのは、パニック発作による「予期不安」です。
 
「とにかく死にそうな」という派手な感想がストレートに出るくらいですから、それは恐ろしい体験だったのでしょう。
 
あの不可解な感覚に再び襲われるのではないかという懸念、中学生の彼にとっては恐怖そのものでしょう。中学生でなくても普通に怖いです。
 
 
「じゃあ、もう怖くて仕方ないでしょうよ?そのまま引きこもっちゃった感じですか?」
 
 
「タケイさんねえ、アナタ人ごとだと思って……ハンパなくヤバい感覚だよアレ!?まあいいや、……次の日ちゃんと学校行ったよ。」
 
 
「えらいですね。」
 
 
「まあ寝て起きたら、アレはなんだったんだろう?って感じだったから、そんなに気にしなかったよ。」
 
 
彼は超常体験をした、くらいに心に留めていた様でした。「精神的な」やら「パニック発作」やらとの関連付けは一切していませんでした。また、そういった知識は皆無だったので、変に囚われたり悩まずに済んだ様です。
 
 
「なあきいてきいて。きのうオレ幽体離脱したっぽいわ。」
 
 
「まじで?何いってんの!フハッ!」
 
 
「いやマジマジ!相当ヤバいからアレ。」
 
 
「はあー。どんな感じよ?飛んだ?」
 
 
「飛んだよね。宇宙へ。そんでそこから自分を見下ろしてたわ」
 
 
「お前、行くトコまで行ったなあ…….!」
 
 
「だろ?だろ?いやでも正直シャレになんないくらい怖かったわ…….」
 
 
と、クラスメイトとこんな感じで談笑をもって「無かった事」として彼は扱いました。
 
確かにそれで終わればただのオモシロ体験談で済みます。
 
しかし、「予期不安」の「よ」の字も無かった彼は再び恐怖します。
 
「二度目のパニック発作」が彼を襲いました。
 
そして彼の解釈は激変しました。
 
 
 
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