ギャンブル依存症解析 【最初から読む】





 
等価交換4号機クランキーコンドル、着席した彼は手順を怠たる事なく打ちます。

 

 

 

左リール上段に「青7」を毎ゲーム狙う。

 

中リール上段にも「青7」を狙う。

 

上段で7がテンパイしたらその時点でリーチ目。7を揃える。

揃わなかったら次ゲーム1枚BETでREGボーナスを揃える。

 

7でなく小役がテンパイしたら右リールスイカ絵柄を狙う。

 

これで通常時の小役の取りこぼしは100%ありません。

 

 

BIGボーナス中は「リプレイハズシ」の手順を踏み、JACゲーム以外の小役ゲームを残り8ゲーム程度まで強制的に引き延ばし、15枚役や8枚役を出来る限り取る。

これにより、BIGボーナス中の獲得枚数は、無造作に打った場合に比べ50枚近く増えます。

 

以上の点の慣行によって、クランキーコンドルは「設定1」でも100%を超える機械割が算出されます。(機械割とは投入枚数に対する払い戻し率の設定で、100%を超えた場合は差玉がプレイヤーの利益となる。期待値とも置き換えられる。)

現行機でいったら「アイムジャグラー」の「設定5」を上回る機械割です。

 

 

 

 

彼の遅咲きコンドルデビューはちょい勝ちでした。

 

彼は確かな手応えを感じ、コンドルを打ち続けます。

 

彼は勝ち続けます。

 

3回打てば2回は勝ちます。

 

たまに勝って、基本的に負ける。という正しい認識が彼にはありました。

 

その正しい認識は、4号機クランキーコンドルに木っ端微塵に破壊されました。

 

着実に彼はコンドルで勝ち続け、ギャンブルの快感を味わいながら現金を増やし続けました。

 

楽しくて気持ちがよくて仕方がありませんでした。

 

 

「でもそんなうまくいく訳が無い。いつか負けが込む。これが続くほど甘くない。」

 

そんな常識的な発想こそ最初はあったものの「青テン」と「リプレイハズシ」が彼にもたらす利益と興奮と妙な安定感は、彼の思考の相当深い部分まで浸食していきます。

 

大音量と強い光、軽い緊張感の中で常に眼球を一定運動させる。

その環境下で不安感や快感や報酬を、体験としても物質的にも受け続ける。

賭けた現金を失う恐怖感と、大当たり出玉による安堵感の混じった快感、不定数の報酬を期待する希望感。

期待、恐怖、絶望、快感刺激、安心、快感、希望、希望、疲労、快感刺激、安心…….この繰り返しです。

人間をある種の催眠状態や被洗脳状態に追いやるには非常に適した条件がいくつも揃っています。

 

その環境下に、彼は自らの意思と習慣で居続けたのです。

頭がおかしくなって当然です。

 

正確にいうと、歪んだ認識を肯定したのです。

犯罪を正当化した上で主張する人間によく見られる心理状態です。

 

 

彼がもともと持っていた素質の中に「厭世観」や「独善的思考」そして「孤独癖」があります。

コンドルで勝ち続けながら意識下と無意識下の中で培った「ギャンブル行為の肯定」は、博打行為中の環境と自らの被暗示、行動認識の中でギャンブル依存症というカテゴリーの博打中毒人格を肯定するまで至りました。

 

彼はそこから動けなくなります。

10年以上。

 

はたから見たら救いようのないものですが、彼にとっては何も問題がありません。

19歳の彼はただただアツく打ち、金を増やし、何の疑いも持たずに快楽に浸る「ギャンブルの虜」でした。

負けるはずのギャンブルで勝ち続ける自分は何か特別な存在であるのでは、という思考さえありました。

 

ここまで彼を狂わせた原因は「4号機クランキーコンドル」ではなく、彼自身です。

そして、歪んだ認識と狂った思考回路を全く自覚していない彼は今日もコンドルを打ちに行きます。

 

 

「今日はハサミ打ちでいこうかな…….と、あれ?

あれ?コンドルちゃんが無い?まじか!」

 

 

新台入れ替えにより、コンドルは撤去されていました。

コンドルがあったシマには同メーカーの新機種が並び、満員御礼、賑やかとは少し違う鉄火場の様な雰囲気に変わっていました。

 

「なんだよ………あれ?なんか7の形がコンドルと似てるな。打ちたい…!」

 

BIG一撃600枚over!がウリの過激な新台でした。

 

この新機種新台「B-MAX」は彼を過呼吸寸前まで追い込む事になります。

 

 

NEXT > 9.私と彼      【最初から読む】