ギャンブル依存症解析【最初から読む】




そういういきさつで彼は博打から足を洗う事にしました。

 

しかし彼は「ギャンブル依存症」です。
それも重度で末期の。

 

ギャンブル依存症が、麻薬中毒やアルコール依存症並みにの離脱症状を伴うのは一般的な認識通りです。
殆どの人間は「ギャンブル依存症」からは決別できません。
彼自身、そういう人間を嫌という程に目の当たりにし、また、共に同じ次元で10年以上過ごしてきました。
この時点でも、彼の知り合いから顔なじみから、スッパリヤメた人間は一人も確認していません。

 

 

 

 

ギャンブル依存症はこれまで記してきた様に、薬物の成分やアルコールなど、外部から内部に摂取する物質そのものが心身を支配する事を一番の要因とし、そこから身体依存を引き起こし精神的に依存し、習慣性を伴い、依存ループを形成する依存症メカニズムと違う点があります。

 

ギャンブル依存症の場合は、その習慣行為によって初めて自ら「依存物質を造り出す」という点が非常にやっかいなのです。
初めてギャンブルで当たって嬉しかった、宝くじで高額当選した、という場合の快感と、
ギャンブルを習慣的に打つ場合の快感の種類は別物です。

 

クセになってしまう快感は、その契機を続けることで依存物質を形成します。
自分の中で、です。「脳内麻薬物質」を自分の好みのブレンド比で生成できるという点ではギャンブル依存症は特殊な中毒症状なのです。

 

 

他の依存症と比較すると良く解りますが、酒や各種の非合法麻薬など、それらの中毒者が求める快感や症状、その結果などは大差がありません。
ギャンブル依存の場合は、人によって「求めている快感や症状」がバラバラです。

 

 

 

連勝し、金が増え続ける快感を求めての依存。

 

大当たりの刺激と快感を求めての依存。

 

日々の満たされない生活実感の虚無感を博打で埋める事での依存。

 

負け続けて悔しさを飲み込めず、勝つ事でのみしか昇華させられない事。

 

冗談では済まされない金額を飲まれた後の勝利からくる安心感。

 

なんとなくいつも賑やかで人がたくさん居る場所での行為が満たす安堵感。

 

コツコツ返済するには多額の借金、それに立ち向かう事に対しての逃避行動。

 

理不尽に金額が揺れ動く事に対する快感。

 

「博打」を「仕事」と倒錯する事。

 

ギャンブル自体がアイディンティティになる事。

 

 

 

 

他にも挙げればキリがありません。
キリのいいところで以上の10点、全てに当てはまるギャンブラーは恐らく居ないはずです。
それほど、ギャンブル依存症の精神的要因は人によってバラバラです。

 

 

もっと直接的に、博打行為に突き動かすエネルギーは

 

「脳内麻薬中毒」
「脳内神経伝達物質のバランス異常」
「習慣」

 

この3つです。
これらは全てのギャンブル中毒者共通項目です。

 

先の10点は「狂った思考パターンの個別要因」となり、博打の「原動力」となります。
それがあるからギャンブル場へと赴き、狂った感覚に酔いしれる事が可能となります。

 

 

彼は重度で末期の依存レベルであった為、「何故自分がギャンブル依存症なのか」は解っていました。
頭では理解していても逆らえない、そのへんの仕組みも理解できています。
そして、それでもヤメられないのがギャンブル依存症だという事も重々承知です。
しかし彼はギャンブル依存症という、自分にとって只の地獄になってしまったそれから脱せる手段がある事に気がつきました。

 

 

前回彼は「勝っても負けても同じだ」と、ある種の悟りじみた事をしみじみ言いました。

 

彼にとってギャンブル依存症から脱する方法は、それを信じ切る、というたったの一点でした。

 

 

そんなんでヤメられたら世のギャンブル依存症更正施設や、その手の書籍なんかは淘汰されてしまいます。

 

彼は彼なりの「自己洗脳」をはじめました。

 

その内容は非常に興味深く、各分野の思考法や洗脳術、行動認識や認知法や、古来からの精神分析などの要素を含んでいるもので、「依存症」に対する「解析」をもってした、彼の「ヤメかた」でした。

 

 

 

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