23.4号機の終焉、その原因
ギャンブル依存症解析【最初から読む】
「パチスロ北斗の拳」と「吉宗」の2台看板機種がホールを賑わせた頃、これがスロットの4号機における最後のお祭り騒ぎでした。
「4号機」とは台の規格の様なもので、その前は「3号機」「2号機」など、その時代のルールや規制に適合させるくくりです。
例えば、機械割は何パーセントから何パーセントの範囲内、1ゲームの消化にかかる時間は何秒以上、などなど非常に細かい内部事情です。
内部事情というからにはやはり「当局」の判断により移り変わりるおおまかな都合であります。
彼は「4号機」の初頭に打ち始めたのでそれ以前の規格の台はあまり打っておらず、特筆すべきエピソードも語られなかったので「3号機」以前の話は割愛します。
(以下、全て4号機台)
「ジャグラー」や「ニューパルサー」ではリーチ目や告知ランプでシンプルながら深みのあるゲーム性で「4号機」の基礎を確立し、多くのパチスロファンを獲得しました。
「クランキーコンドル」「タコスロ」「ハナビ」などのリプレイハズシを駆使して機械割を上げる台は、若者のマネーゲーム心をくすぐり「スロプロ」なんていう俗称も生まれました。
「アステカ」や「シーマスター」などCT機能や第四リール搭載の機種は、その後の爆裂機のゲーム性を産み出す契機となり、あらゆる出玉性能や演出機能を拡大させました。
「B-MAX」「オオハナビ」「ガメラ」等の大量獲得機では、シビアな目押しを要求される事もさることながら、打ち手の投資金額や回収金額が万単位になる事を当然の様にさせました。
このあたりから「パチンコ店のレート自体が上がった」とも解釈できます。
ニューパルやコンドルの頃は1万円もあれば充分な軍資金でした。
しかしアステカやオオハナビの頃は、勝とうと思って打つなら3万円は無いと勝負になりません。
それは、彼の戦績が証明しています。
そして更にレートは上がり、「獣王」「アラジンA」「サラリーマン金太郎」などを代表とする爆裂AT機時代です。朝から打つなら10万円あって初めてまともに勝負出来る台です。
波さえ掴むと一時間あれば5000枚は出ます。10万円です。
10000枚出る事なんて珍しくなく、2万枚や3万枚も可能です。20万円から60万円なんて現実的な射程距離内というスペックの台です。「万枚」というフレーズが馴染んだ頃です。
史上最高レートの台「ミリオンゴッド」、これがAT機狂騒時代のピークでした。
この台と真剣勝負する場合は、現金いくらというより人生を賭ける必要があります。
真っ向勝負し、敗北したギャンブラーのあまりにも目に余る末路は社会に大きく影響を与えました。
目に余る末路とは、社会放棄と多重債務と犯罪と自殺です。
当局の規制を経て、とりあえず「ミリオンゴッド」は即刻葬られ、爆裂AT機も徐々に姿を消します。その後は少々レートが下がりました。
しかし、「パチスロ北斗の拳」や「吉宗」「押忍!番長」など、ゲーム性そのものの魅力により、少々レートが下がっても「ギャンブル依存症」は増える一方でした。
要点は「4号機の規定、規格だといくらでも面白くて中毒性満載の台の開発が可能」という事です。
胴元であるホール経営、遊戯台の開発メーカー側は「客を生かさず殺さず利益を上げ、市場拡大」
当局は「ほどほどの庶民の娯楽」「ある種の資金源」これらをそれぞれが望みます。
しかし、「4号機」の思いの他のポテンシャルはギャンブル依存症を量産し、胴元もプレイヤーも大暴走をした上で「土台である社会機能」までに大きく影響を与えました。
この点を当局が野放しにする訳にはいかず、規制をもって「4号機」は廃止ないし「次の規格」に移る事にさせました。
「当局」「胴元」「プレイヤー」この3点が制御不能な自体をもたらした原因は一言で表せる程単純ではありませんが、私は前回に先述した「人間が死や破滅を本能的に欲する」という点を扱いきれなかったのではないかと思います。
余談ですが、古来の学問では生きる欲求「エロス」に対し、死にたい欲求「タナトス」という概念があるそうです。
ほどほどスリルが味わえる「博打場の扱い」に失敗した、とも感じます。
「破滅欲」や「タナトス」は上手い具合に飼いならせるレベルの欲求ではないから、ギャンブラーは時に依存症という状態に陥るのではないでしょうか。
依存症が全て「破滅欲」に絡む訳では無いので、ことギャンブルに於いては、ですが。
要するに「4号機」は行くトコまで行ってしまい、やりすぎだった様です。
それほど魅力があり、人を狂わす機能満載の台がたくさんあったのです。
彼が26歳の頃、「4号機」の撤廃が敢行されました。
コンドルともニューパルともお別れです。
そして財布にやさしい「5号機」の登場です。
その新たな仕様に、ギャンブラーは全員ガッカリしました。