ギャンブル依存症解析【最初から読む】




なんだかんだと不満が多いながらも彼は5号機を打っていました。

何が一番の不満かというとやはり「金額の上下がやさし過ぎる」という点でした。

 

「こんなにつまらない上に5万とか10万円勝つのは至難の技だし…..

やってられるか!」

 

と口には出さないものの、常にフラストレーションを抱えながら結局いつものペースで打ち、以前以上のペースで負債を膨らませる日々でした。

極端に言うと、1万円勝って2万円負ける。そんな不毛な成績が続きました。

打たないという選択肢が欠落しているのは依存症だからの一点です。

 

 

そんな中、彼のギャンブル仲間がとある台を勧めてきました。

 

「おい、5号機なんてかったるいのつまんねえだろ?エヴァ打とうぜ。」

 

電話口でその台が如何にアツいか、その台のスペックや魅力やらを流暢にプレゼンされた彼は少し興味を持ちました。

 

「CRエヴァンゲリオン使徒再び」は5号機ではなくパチンコ台です。

彼はスロット専門というわけではなく、たまに冷やかし程度にCR機や一般台なんかも打つ事はありました。

それこそ「CR大工の源さん」や「CRモンスターハウス」なんかの時代でもたまに「パッキーカード2~3枚」程度の投資額で打っていました。

パッキーカードとは、90年代のホールでは常識的に存在した「パチンコ店に於けるプリペイドカード」みたいなものです。

 

彼がパチンコにはさほど執着しなかったのは、「運の要素が大半」だと彼は解釈していて、スロットのリプレイハズシやストック狙い高設定判別などの「戦略や技術介入要素」の少なさから勝てる理由があまりない、との判断でした。

 

少し釘が甘かったり、止め打ちで出玉を微増させたところでは勝率の変化などさほど望めるものではなく、「確変」のヒキが全てだという事を知っていたからです。

 

逆に「確変」の概念が無い一般台、羽モノなんかは「甘釘台」を見つけたらトコトン打ち込み収益をあげました。

ホール店員時代の経験と知識で、「羽モノの甘釘台の破壊力」はよく知っていたからです。

彼に言わせると、「パチンコ店で最もローリスクで最も固くリターンが望めるのは、釘の開いた羽モノとかの昔ながらの仕様のパチンコ台」なのだそうです。

 

 

「エヴァって羽モノじゃないですよね?勝てないでしょうよ。」

 

「まあまあ、いいから一回打ってみろって!」

 

 

勧められるがままに彼は一緒に「CR新世紀エヴァンゲリオン使徒再び」を打ちました。

並んで着席し、最近のCR台の知識があまりないので都度レクチャーを受けながら打ちました。

 

「いいか?1,3,5の図柄があるだろ?それが並べば暴走モードだからな!」

 

「はあ。(暴走モード?なに言ってんだこの人は……?)」

 

 

最近のCR機どころか「新世紀エヴァンゲリオン」という作品の知識も全く無いので「暴走」と言われてもピンと来ません。

 

「なんだかなあ。このアニメ?の事全く知らないんですよねえ……つまんないなあ…..」

 

「まあまあ、すぐ慣れるって!……….っておい!それ!」

 

 

興奮気味に自分の台に指をさされた先には、別になんて事は無く通常画面でおとなしいものでした。

 

「なんすか?アツくないでしょうよ。どうみても。静かになってるし…….あれ動かないな?」

 

「よくみろ!1,3,5!暴走だよバカ!」

 

「……..ああ!なるほど!!」

 

 

「1,3,5」の各図柄が順不同に直線に停止し、暴走モードという名の「2ラウンド開放確率変動大当たり」に当選しました。

つまり出玉ほぼ無しからの確変状態突入です。

彼にとっては斬新な当たりと刺激でした。

 

そして暴走モードから確変を引き、連チャンへと発展しました。

彼はやっと少し楽しくなってきました。

 

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