24.ヤメるチャンス到来
ギャンブル依存症解析【最初から読む】
スロットが5号機に移り変わりました。
彼をはじめとするギャンブラー諸兄が何故ガッカリしたかというと、それは簡単な理由です。
4号機の頃と比べ、格段にレートが下がった為にアツくなれない。つまらない。からでしょう。
レートが下がったというのは正確な表現ではありませんが、「差玉」が相当おとなしくなったという点で低レート化したと捉えて問題ないでしょう。
「メダル50枚を1000円で貸し出し」ここは変わりません。
狂った様にも勝つ事もないかわりに、同じく負ける事もありません。
せいぜい平均して一日に上下5~6万くらいの金銭の動きです。
1万円もあれば遊べる程度の健全な?スペックの規定、規格。おおまかな5号機初期の概念です。
さて、これではギャンブル依存症の人間は大変です。
5号機の規定になり、台のゲーム性は「プレイヤーの平等性」を重視した結果「打ち手のレベルによる差玉の変化」の要素を排除しました。
細かく言うと「リプレイハズシ」は効かなくなり、「特定のゲーム数を狙い打つ」事も出来なくなりました。
高設定ならほどほど勝ち、低設定ならまず負ける。という本来の特性を正確にならうゲーム性となったのです。
店側にとってこれほど好都合な事はないのですが、肝心の打ち手が冷めてしまい自然と客離れが起きました。
5号機への推移を機にスロットを打たなくなったり、「スロプロ」を廃業したなんて話を多く聞いた時期です。
ギャンブル依存症の人間の最も欲する点は、「持続できる期待感」と「ランダムな大当たり契機の快感」そして「予測不能の報酬感」この3点が主です。
実生活で簡単に得る事のできない3点の快感をギャンブルに転嫁、投影させた上で満足感と快感に浸り、それらが得られなかった場合(負けた時)は次回またギャンブルを打つというモチベーションになります。
その繰り返しの中で倒錯した思考回路の構築を行い、脳内麻薬中毒に陥りドーパミンやらセロトニンやらの分泌バランスから何からは崩れ、そのうち本人の自覚以上に体調も崩れます。
心身共にボロボロのジャンキーそのものであり、他人の目からは病人の様な物腰に見えます。
そして借金をして打っている場合は、それが自身を縛る鎖となってしまい「ギャンブルをヤメる」「ヤメない」ではなく、「打たなければ」「打って勝たなければ」との強迫観念に取り憑かれます。
ここまで進行したギャンブル依存症は自身のみの手段でも他者の手をもってしても脱出する事はまず不可能です。
5号機になってスペックもおとなしくなり、ゲーム性もなんだか平和になって「勝てる要素」がほぼ皆無になった事を彼は最初に理解しました。
「こんなハズシも効かない、ストックも狙えない台じゃ無理だ。5号機は無理だ….さすがに潮時かな…….」
そんな事わかっていましたが、末期的依存度の彼はヤメる事もなくズルズルと1年くらいコンスタントに負け続けました。
彼が好きだった「ジャグラー」や「ハナビ」「クランキーコンドル」の後継機がリリースされました。
5号機「アイムジャグラー」「青ドン」のそれは4号機と見た目こそ似ていましたが、内容は根本から違うので「勝てないし面白くない」という不満しかありませんでした。
打ってもさほど面白くないが、何しろ依存症なので少しの快感と期待感を求めます。
その少しの期待感がどうあがいても捨てきれません。
倒錯したまま固まった思考回路と脳内麻薬中毒、借金による強迫観念の鎖、それらを総括したギャンブル習慣は、彼の思い描く「理想の人生像」や「自身の尊厳」そして「自意識のコントロール」「無意識のガード」その全てを鈍化させました。
それでも彼はホールに足繁く通います。